第160話 「文章恐怖症」
WYSIWYGな一見万能にも思えるこのエディターにも致命的な欠点がある。
それは、僕が今まさに文章を入力せんとするカーソル位置に編集可能領域枠がオーバーラップするのだ。
一般にはこの事象を「バグ」或いは「仕様」と言うのが相場だ。
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僕はこの一週間、ある素敵なオファーにより、少し長めの文章に挑戦している。長いといってもこの"POMP's Pop"に毛が生えた程度だが、毛の生えた程度ならいつも通り書けばよいものを、妙に気負ってしまい、一向に進まない。
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僕はこれがなければ仕事にならない程、このエディターに依存している。一般に○○信者と呼ばれるような特定ソフトウェア一神教主義的盲目な思想を持ち合わせてはいないはずだが、ことこのソフトウェアに関してはどうにもこれ以外の選択肢を考えられない。
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いわゆる文章恐怖症である。書くことで自分を慰め、奮い立たせ、癒し癒され、そうやって過ごしてきた日々とは明らかに違う感覚が僕を悩ませる。書きたい。書いてそれをたくさんの人に見てもらいたい。それなのに何を書けば良いのかさっぱり分からない。
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この一週間でもここのネタになるようなことがいくつもあった。本来であれば、今こそここに精一杯その思いを綴るべきなのかもしれない。けれど書くことが出来ない。
一瞬、あの何も手につかずに悶々と過ごした不毛な日々が脳裏を掠める。
このままダメになるわけにはいかない。
先週購入のCD:Bomfunk Mc's ”In Stereo” / Going Steady ”さくらの唄”
<連絡事項>
忘れ物を預かっております。お心当たりのある方は事務所まで取りに来てください。
ミニストップ入間野田店のライターが目印です。
第159話 「エマージェンシーでスクランブルな黒塗りのハイヤー」
午前6時。外は既に明るい。
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日曜日にやるはずだった原稿が全く進まず、月曜日に持ち越し、さらにビールを飲んで居眠り、気がつけば真夜中。しかし真夜中に一番仕事が捗るのは周知の事実である。
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夕食の買出しに出かけた帰り道。僕はいつも歩いている道に素敵な壁があることに気付いた。
最近「壁」に凝っている。外出時には欠かさず携帯しているカメラで、ふと見つけた素敵な壁を写真に撮るのが楽しい。もちろん花も撮っている。しかし今は壁がマイブームだ。
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いつものように壁にカメラを向けようと立ち位置を決めていたときのことだ。
一人の男性がそそくさとこちらに向かってきて、僕の存在に気付くとまたそそくさと去っていった。僕はその「そそくさ」具合に妙な引っかかりを感じ、彼の行く先を目で追った。年は50位、よくある背広姿のオジサンだ。
*
僕の予感は的中した。
彼は車の陰で用を足し始めたのだ。スクランブルで慌てて位置決めしている段階で僕と遭遇、急遽攻撃ポイントを変更したのだ。とにかくエマージェンシーなのだ。
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僕は何事も無かったかのように、見つけた素敵な壁を存分に堪能すると、帰り道を歩き始めた。
ちょうど彼も危機を脱したらしく、優雅に帰還しようとしている。
そこで僕は驚いた。
なんと彼は偉い人らしく、白い手袋をした運転手に扉を開けてもらい、黒塗りのハイヤーに乗り込んだのだ。
ハイヤーはそのままゆっくりと去っていく。
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僕は去り行くハイヤーを見ながら、そのあまりに不釣合いなスクランブルを思い出していた。しかも彼は帰還の際、ハイヤーの後ろに止まっていた高級車のフロントに袖を引っ掛けていたのだ。そのときのカチン!という小気味良い音は今でもハッキリ覚えている。恐らく小さな傷がついているに違いない。
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僕がいつか運転手付きの車に乗り込めるような人間になることが万が一あったとしたなら、
僕は間違いなく、
「自分の好きな車を自分で運転、スクランブル時はコンビニで。」
を選ぶだろう。嗚呼、でも近くにコンビにも何も無かったらどうしよう。エマージェンシーである。綿密な危機管理が必要である。
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まぁとにかく、カリカリのEP82にまた乗ることができたなら、それはどんなハイヤーよりも快適なドライブになるに違いない。
そういう結論に達した頃、冷えたビールの待つ事務所にたどり着いた。
第158話 「マジックマッシュルーム」
コンビニ弁当はもうウンザリだ。
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事務所のある商店街の入り口に怪しい露店を発見した。
小さな机に置かれた興味深い物体。
下手な字で書かれた説明書きはこうだ。
「合法 マジックマッシュルーム \3,000-」
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頼まれていた宅配料金を立て替え、本屋で本を買ったら所持金が1000円を切った。
夕食が食べられないのはヤバイ。それよりも所持金を把握していないのはもっとヤバイ。
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コンビニ弁当を選んでいたら、カロリーが気になって、手にした弁当を3回変えた。
そのくせビールは迷わず手にする。銘柄なんて気にしたことは無い。僕には一番安い発泡酒がお似合いだ。
誰か僕にまともな食事を。
*
いかにも電波系な怪しいバンダナの男はニヤついた顔で座っている。
「これ、大丈夫なの?」
と聞くと、
「今のところはね」
とニヤついて答えた。
*
所持金が1000円を切り、食費さえ危うい僕にはもちろん買うことはできなかった。
大体そんなモノが無くてもいつでも飛べるし、観賞用の植物には困っていない。
*
そもそもあのバンダナがいただけない。
第157話 「持論」
エアコンが臭い。
これだけのことで僕はいくらでも怒り狂い、罵倒の言葉を浴びせ、また意気消沈することもできるが、それは僕の本望ではない。
*
再び太宰の短編『たずねびと』を読んだ。
やはり最後にやや難解な心理描写があった。意図的に仕組まれている気がして、安易に受け止めるには些か気が引ける。
*
スピルバーグ監督が「A.I」の記者会見で、
「人は善で、人はいつか悪を克服する」
という風なことを言っていたそうだ。
僕は真っ先に首を傾げる。
希望的観測。
僕にはそう思えて仕方がない。
*
僕の持論を披瀝すると、
「人は悪である。」
となっている。
だからといって、人の存在を否定しているといった訳ではなく、単純にそう思うのだ。
そして、人には善も悪も同居しており、その同居こそが心のバランスを保っているのだ。
これらを踏まえ、スピルバーグ風にまとめると、
「人は悪で、人はいつか善も悪も克服する」
と僕は考える。
*
それにしても、エアコンが臭い。
第156話 「Power of song」
だるくて何もする気が起きずに布団の中で猫と戯る。
それにも飽きてふとしたタイミングで起き上がると、大体はそれで次の行動に移せるハズだった。
けれど、どうにもそれだけでは足りないらしく、気だるい気持ちは再び僕の体を横たわらせる。
*
何を思ったのか、突如、僕は歌を歌い始めた。
今となっては何の歌を歌ったのかさえも覚えていないが、僕は歌を歌った。
不思議なもので、だんだんと気分が高揚してくる。
今までのだるさが嘘のように消え、僕は意気揚揚と家を出た。
*
歌には不思議な力がある。
僕はそれを再確認した。
*
Power of design
僕はこれに関してはを未だ確認していない。
いや、しているのかもしれないが、自覚していない。
本当の”力”とはなんだろう?
第155話 「独立」
小、中、高と同じ学校だった友人からもの凄く久しぶりに電話が来た。
仕事の合間の休憩時間だという。恥ずかしながら僕は未だ布団の中だ。
*
彼は独立準備をしているらしく、その宣伝のために電話をしてきたようだ。
僕はてっきり、建築事務所を構えるのだとばかり思っていたが、そうではなく、趣味が昂じて車の仲介業を始めるということだった。
*
「人に使われるのは性に合わないから。」
そう言われて、僕もそう思ったっけと2年前の冬を思い出していた。
そして、今思うのは、
僕にとって人に使われるのもそうでもないのもあまり関係ない。
ということだ。
結局、僕のやりたいことだけやって、それが世に出て、役に立って、お金が入る。
これが満たされていれば、使われていようが、そうでなかろうが関係無いわけである。
まあ、その実現の近道が独立なのかもしれないが、全部自分でやらなければいけないということは、やりたいことができる反面、やりたくないことも沢山やならければならないのである。
ただでさえ、創造作業のトロい僕にとって、余計な事に時間を取られるのは大問題なのである。苦手なことはそれを得意とする人がやるべきだし、その方が効率がいい。
*
ハイ、理想論です。
そして、独立もイイと思います。夢の実現のために行動を起した。その時点で、もう十分素晴らしいのです。
ただ、僕の場合、純粋にやりたい事への執着のみがある。という事でしょうか。
第154話 「趣2」
風邪が治らない。
相変わらず喉が痛い。
治りかけた日に、事務所に泊まったら悪化した。
だからまた、栄養ドリンクを飲んでみた。
*
太宰はいい。
高校生の頃に少しだけかじって以来、久しぶりに読んでみたらやはり良かった。
*
「それは、片恋というものであって、そうして、片恋というものこそ常に恋の最高の姿である。」
*
さて、これをどう捉えるべきか。
通して述べている恋愛はチャンスではないということについては良く分かるのだが、最後にこれだ。
それを美しいと採るか惨めと採るか。これはいかに自分をナルシスティックに物語の中心に立たせるかにかかっていると僕は考える。
かくいう僕は自他共に認めるナル男クンなので、片恋でもなんでもその状況における自分が最高なワケだが、どうだろう?果たして片思いは常に恋の最高の姿であると言えるだろうか?
*
僕はこう付け足したい。
「さらに言うならば、恋に気付いた瞬間から、邪念が芽生えるまでの恋の初期段階、この時点においての感情、これこそが最高の姿である。」
*
・・・。
失礼しました。
引用:太宰治「チャンス」
第153話 「趣」
風邪をひいた。
喉が痛くて体がだるい。
この暑いなか、長袖のシャツを着ても汗一つかかないのはどういうことか。
*
事務所のプリンターが壊れた。
誰かの格闘の後が残っている。ネジが2つとバネ一つ。
挑戦する気は毛頭無かったのだが、こういうのを見ると血が騒ぐ。
この血は間違いなく父親譲りだ。
*
花はいい。
綺麗だし、動かないし、趣がある。
花をたくさん撮っても、花の名前はほとんど知らない。
名前を知らないというのが、またいい。
次に同じ花を見ても違う花のように感じるし、違う写真が撮れる。
*
栄養ドリンクが役に立った。
ちょうど調子が悪くなる前日に知人から頂いて、冷蔵庫に保管しておいたら、風邪をひいた。
こういうときに飲むと治りが早い。感謝。
*
壊れたプリンター、思ったより簡単に治った。
バネを元の位置に戻して、他の外れていた部品とかを元の位置に戻したらちゃんと動いた。
ただ、悔しかったのは、配線を繋ぐカプラーが外れなかったこと。結局外さなくても作業できたけど、外そうとして外れないのは歯痒い。
治ったけど、一箇所部品が壊れてて、あれはどうしようもなかったから、そのまま。多分、近いうちにまた壊れる。そしてまた直す。それもまた趣がある。
*
どうすればいいのか分からないことが多くて、ただひたすら頭を悩ませるのだが、悩み損だろうか。少なくともそこに趣は感じられないようだ。
第152話 「僕にできること」
なにができるだろうか。ふと考えてみる。
*
今日も暑い。うだるような暑さと眠気。仕事はしたくない。
また仕事で悪い結果をだしてしまい、落ち込む・・・かと思ったが、普通。
虫刺されの腫れが引かない。
*
終電まであと10分。
*
できることはあっても、最後まで出来る自信はないし、出来たからといって何になるというのか。
どうでもいいような、よくないような。
本日購入のCD:空気公団 「融」
第151話 「通り雨」
どうにも納得がいかない。
そんなことばかりでも仕方が無いと考えるほうが無難か。
*
今日は煙い日なので、わざとゆっくり起きる。
それにしても暑い。梅雨はどこへ行ったのだろうか?
*
猫が伸びるようにして床に寝そべった。
しばらく掃除もロクにしていない僕の部屋でも、猫にとってはくつろげる空間なのだろうか。
ちなみに部屋には未だにコタツが出ている。朝、目が覚めるとそこにいて、僕がシャワーを浴びている間にいなくなってしまう彼は、コタツ布団に寄り添うように寝るのが好きなようだ。
*
夕方、赤坂へ。
BLITZで「みみずくず」と「坂本サトル」を観てきた。
みみずくずは少し前に1曲だけ聞いたことがあって、凄く雰囲気のあるバンドだと思った。
実際その通りで、ボーカルのキュートな歌声やパフォーマンス、バンドの勢いが良かった。
坂本サトルは元ジガーズ・サンのボーカル。5年・・・いや、もっと前か?「大丈夫」という曲がスマッシュヒットしてた。僕は当時彼らに全く興味が無く、有線で聞く程度だったと思う。
今日もそれほど期待してはいなかったのだが、大外れである。凄く良かった。
最初、セッティングされたのがマイク2本とギター1?本だったので、一体何が始まるんだ?と首をかしげたのだが、弾き語り+ギターという構成でやりはじめ、始まってからも変わってるなと思っていたら、右側のギタリストがうまいこと。心地よい音色がなんとも言えず。
坂本サトルの切なげな詩とかすれ声、全身で歌うパワーに素晴らしいギター。
僕は終始鳥肌状態で聞き入ってしまった。こんなに良いギターを聞いたのは久しぶりかもしれない。僕が最近好んで聞く、オルタナ・メロコア・エモコアな音楽では絶対聴けない音だった。久しぶりにギターを弾いてみたくなった。
*
気分良く帰ってきたらいつの間にか通り雨が降ったらしく、最高に蒸していた。CD屋に寄ってみみずくずのアルバムを手にしたけれど、通り雨で蒸した感じが非常に不快だったので、買うのはやめた。
今日のおまけショット:赤坂BLITZ前
第150話 「オトナ飲み」
帰りの電車で、ふと床を見てみたらツケマツゲが落ちていた。
僕はその驚くべきシチュエーションに、思わず写真を撮らずにはいられなかった。
そして、写真をPCに取り込んで気付いた。
奴は2つ重なっている・・・。
僕はその驚くべき事実に、思わず腹を抱えて笑った。(驚くべき写真はコチラ)
*
翌日・・・。
*
朝(といっても昼)起きて、いつものように冷蔵庫の野菜ジュースを手にする。
僕の冷蔵庫には野菜ジュースしか入っていない。
野菜ジュースは伊藤園の充実野菜が最高だ。そんな充実野菜フリークな僕は、あのにが〜いモロヘイヤミックスでさえも平気で飲めるようになってしまった。
フタを開ける。途中で、若干の引っ掛かりを感じた。僕は構わずフタを開け、それを飲む。
ふと冷蔵庫を見ると、飲みかけの充実野菜が1本。
・・・。
なんという神のいたづら。まだロクに飲んでないのに、2本目の充実野菜のフタを開けてしまったのだ!
僕はその驚くべきシチュエーションに、思わず写真を撮らずにはいられなかった。
そして、写真をPCに取り込んで気付いた。
「はちみつ入り(加糖)」だったんだ・・・。
僕はその驚くべき事実に、思わず眉をひそめた。(驚くべき写真はコチラ)
*
それにしても、なんと贅沢な充実野菜の楽しみ方だろうか。2本ともフタが開いているのだ。1本飲み切るのに何日かかるかも分からないのに・・・だ。
*
僕はこの贅沢な飲み方を「オトナ飲み」と名づけることにした。
名前がついたからには、さらにオトナ飲みを実践しなければならない。
ということで、事務所の棚の中にある僕専用の、来たる真夏の熱さに対抗すべく用意した最終兵器、「カルピス」をオトナ飲みするのはどうかと考えた。
これらのカルピスのフタを全て開け、少しずつ味わう。・・・なんて贅沢な楽しみ方だろう。
きっとカルピスKKの小林会長も喜ぶに違いない。(会長、僕のカルピスはコチラです。)
*
とかいうことを色々考えて楽しんだ。
今日のコラムは暗くないに違いない。
第149話 「単純作業中の単純思考」
160のHTML、355のJPEG、600のGIF、32のPNG。
僕はもはや、世界一精度の悪いロボットだ。
作業が単純化され、自分の中でルーチン化されてくると、頭の中では全く関係無い事を考え始めることに気付いた。
僕はかれこれ何時間同じ事を続けているだろうか?
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珍しく母親から電話があった。他愛も無い世間話などして、報告するほどのものでもない近況を報告し、電話を切った。
*
こういう時の僕は、どうやら自分の納得いかないことや、悲しいことなどを考えるらしく、せっせと手を動かしながら、ただひたすらに怒りだけがこみ上げてくる。
*
珍しく父親からメールが来た。近況を報告しなさいと言われて、報告するほどのものでもない近況を報告し、送信した。
*
自分の思い通りにいかないこと、自分ではどうにもできないこと、他人の気持ちや世の中の流れや、些細な出来事などを思い浮かべ、やはりたどり着くのは、何故こうなってしまったのか、何故僕はここにいるのか、ということだった。
*
普段滅多に連絡など無い両親から立て続けに連絡が来て少し気味が悪い。どうしたのだろうか?人恋しい気分なのだろうか。ちなみに僕は人恋しいし、寂しいし、腹立たしいし、空しい。もしかしたらそれが親にまで通じたのか?だとしたら血のつながりは偉大だ。
*
ひたすら怒り続け、作業が終わったところで印刷に入ろうとしたら紙が無い。なんだろう。このこみ上げてくる寂寥感は。気分は最悪だ。
*
だいたいこのコラム、暗すぎやしないか?
作業中、そういうことも考えたりした。
第148話 「益荒男・手弱女(ますらお・たおやめ)」
「先ほどはコーヒーおご馳走様でした。」
意味不明なメールがやってきた。
僕は先ほど、コーヒーをご馳走した覚えなど無い。
*
朝起きたら猫が2匹、僕の隣で無防備に眠っていた。
僕は起こしては悪いと思い、しばらく猫達を眺めていた。
そうして、気がついたら僕も眠っていた。
*
昔のメールが届いた。
見覚えのある内容だと思い調べてみると、送信日付が4月10日になっている。
確かにこの日はコーヒーをご馳走したかもしれない。
*
眠りすぎて目が覚めると、猫は1匹に減っていた。片方はどこかへ出かけたのだろうか?
もう片方は未だ無防備に眠っている。
*
不思議なことは重なるもので、実はiモードの方にも別の人から昔のメールが届いた。
僕は一瞬、自分に少しだけ時間を巻き戻すことができる力があるのだろうかと考えた。
冷静に考えればそんなことあるわけも無く、インターネットメールが曖昧な仕組みになっていることも良く知っている。なにより、2ヶ月くらい時間を戻してみても、何も変わらない。むしろ、そのほうが辛いかもしれない。さっさと時が過ぎて僕に充実と幸福と安らぎの時が訪れることを願うばかりだ。
*
思いがけず来客があって、猫は敏感に立ち上がり、そそくさと部屋を出てゆく。
ああいった物腰を見るにつけ、野生を感じる。
僕ときたら、布団から出ることも無く、だらしなく横たわるだけだ。
*
時々思い出す言葉がある。意味もわからないのに思い出して、それを呪文のように口にし、そしてまた忘れる。
そんなことばの中に「ますらお」「たおやめ」がある。今日はそれを思い出した。
今日こそは意味を知ろうと思い、そして忘れた。
けれど、なんとか再び思い出すことに成功し、調べた。
漢字で書くと益荒男・手弱女。意味は雄々しく強い男。・やさしい女。しとやかな女。
そういえば高校時代に古典の授業で習ったような気がしてきた。
それにしても、漢字で見てしまうと現代とのギャップのようなものを感じてしまう。
でもまぁ僕の気が済んだので、そんなことはどうでもイイ事だ。
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