死ぬ事の未練さを思えば、生きる事のジレンマなど可愛いものだ。

朝、道端に猫が血を流して死んでいて、軽く手を合わせてその場を去った。
今になってみれば、そのときもカメラを持っていたのだが、
その亡骸をを写真に収めようなどとはこれっぽっちも思わなかった。
その時、いつものように右手にカメラが握られていたとしたら、僕はシャッターを切れるのだろうか。
撮った写真を毎日目にすることになるとしても、僕はシャッターを切れるのだろうか。
真実から目を逸らし、上辺だけの色彩におぼれ、デジタルを過信し、勘違いした美学を築き上げる僕。
怖いのだ。
本当の事を知ることが。
とても怖いのだ。